200X年X月X日、Ｊ国三防衛隊統合演習に参加した部隊が台風に遭遇、潜水艦を含む全部隊からの通信が突如途絶えた。台風通過後、すべての部隊が跡形もなく消え去り、Ｊ国防衛隊･海上保安局･在Ｊ国Ａ国軍がＩ島及び周辺海域を、全力で捜索しているが、生存者や遺体はおろか、漂流物すら発見できていない。視察で訪れた防衛局長官や統合幕僚長も含め、参加した防衛官1万名近くの生死も行方も一切不明で、家族は不安な日々を過ごしている。まさに神隠しにあったとしか思えないという首相の言葉通りだ。Ｉ島及びその付近の空海域で行なわれたこの演習は、統合幕僚会議が統合幕僚監部（諸外国の統合参謀本部に相当）に組織変更されて以来3度目のＪ国三防衛隊統合演習だった。敵役含めて戦闘機・支援戦闘機・AWACS・P-3C・空中給油機・輸送ヘリ・潜水艦2隻・揚陸艦・艦隊補給艦・1個護衛群・対艦ミサイル部隊、特殊作戦群を含む2個旅団の地上兵力など、艦艇21隻、航空機136（固定翼機・回転翼機）機、車輌300両以上、人員9864人が参加するＪ国防衛隊創設以来の大規模な演習だった。情報本部が運用している偵察衛星からも、Ａ国軍の偵察衛星のセンサーからもその姿は忽然と消え失せた。気象局も海上保安局も学術研究者も、常識の範囲を超えた異常な事態と原因の解明に手間取っている。