ゲイル・ベルテンブルク司令官殿ですね。私は現在、この地の参謀を務めています
挨拶はいい、状況を説明してくれ
はい。ソルビエスの兵力は圧倒的で、我がほうにくらべ三倍強の兵力を有しております。配置としては……
深刻だな……
はい
なんとかなりそうか?
我々に不可能はありません。私たちは――
よせっ
失礼しました
とはいえ……この兵力差だ。お前たちだけに頼るわけにもいかない
司令、よろしいでしょうか? 私に作戦がございます
うん? 言ってみろ
はい、ソルビエスの無線を傍受しました結果……このあとソルビエス軍が西進を続けることがわかりました
指令! 予想どおり、ソルビエスが西進、タンネンベルクに兵を進めはじめました!
予定どおりソルビエスの左翼から叩くぞっ! 右翼にて指揮をとるアドルファに伝えよ! その技量のすべてを持ち、ソルビエス軍を殲滅せよと!
はっ
予定どおりだ。その技量のすべてを持ち、ソルビエス軍を殲滅せよ! その技量のすべてを持ち、ソルビエス軍を殲滅せよ!
進軍を開始するっ! このアドルファに続けっ!
首都に伝えよ……”タンネンベルク村近くで勝利”と
…………夢か
老いたものだな…………
くくっ……鉄腕ゲイルも………………ずいぶんと錆付いてしまったものだ
……入れ
失礼します。大統領……テュール首相がおこしになりました
失礼します、大統領
座ってくれ……
すまないな。呼び立てたというのに、このような体勢で出迎えることになってしまって……
いえ……それはかまいません
お前は……かわらないな……
はい……私は、そのように作られましたから……
そう……そうであったな…………
超人兵?
そう超人兵です
ご存じのように、過去、プロイセンの王家には希に傑出した才を持つ王が生まれることがありました
その秀でた才は心・技・体、すべてにおいて類い希な力を持ち……人心を集める王の中の王……そう呼ばれる王たちが、数代に一度生まれてきたのです
王家は考えました。その力の源は、この血脈の中に眠っているのではないか……と、そのことを研究するために極秘に作られたのが我々の研究機関です
我々は王の命により、その血脈を研究し……その血を科学的に分析し…………いくつかの可能性に辿りつきました。そうして……そのひとつの成果がこの超人の兵です
王の血を研究したというのか…………
テュール、入れ
はい
彼女は?
彼女が、その超人兵です。王家の血を引き継ぎ……誰よりも傑出した力を持つ最強の兵士…………その成功例のひとりです
………………
どうですか……彼女は?
………………お前たちの独断で、王家の血を弄んだのではないのか
いいえ、先ほども申しあげましたが……あくまでも王の命によるものです
本当なのだな
はい、本当です
彼女を、あなたのもとで使ってもらいたい
どういうことだ?
王よりの命です。プロイセンは未曾有の危機を迎えています。今こそ王家の血を継ぎし超人兵の力が必要な時……あなたであれば使いこなすことができるだろうと
王より…………
わかった。引きうけよう。ただし、お前たちが王家の血を勝手に汚したことがわかればどうなるか……
はい、ご安心ください…………それと、このことはどうかご内密に……あなたの命が危うくなる
ふん……偉そうに…………まあいい
テュール・アドルファ! いくぞっ。これからすぐタンネンベルクに出発だっ
はい
お前は…………本当にあの時とかわらないな……
はい……
…………あの大戦のあと……プロイセン王家は革命により……その血を絶やしてしまった。今、その血が残るのは……お前たちのみだ
……はい
私は……あの革命は、正しかったとは思えない……はぁ……私は王家の血を絶やすべきではなかったと……思っている……はぁ
私は……王家こそ…………王家を形作るものこそが…………何よりも……大切なものであると思っている……はぁ…………ふぅ
あの大戦で作られた超人兵は100人ほど……戦死をした者はほとんどいないというのに、すでに残っているのは、あと数人…………
人の命というものは……まだ科学の力の及ばない。あまりにも遠い世界なのだろう…………きっと…………お前の命も……長くは続かないはずだ
それでも……きさまは望むのか……NSPの党首となり……プロイセンの首相となった今でも…………まだ望むものはあるか? テュール
私が望むのは、権力ではありません……
ほう……
私が望むのは……胸の中でくすぶり続けるこの思いを……焦がれるほどに熱い思いを埋めるものを欲するだけです…………
私の闘争は、まだ終わりを迎えていません。ベルテンブルク参謀総長殿……あの日、参謀総長殿と共にはじまった闘争は終わりを迎えていないのです
そのために、私は日々を過ごしてきました…………参謀総長殿と同じように…………
そうか…………そうか……………………
私も…………同じだ…………あの戦は……まだ終わっていない…………序曲にすぎないのだ…………
あの日……タンネンベルクの地で…………見たお前の勇姿……それは…………まさに王の姿…………そのものであった…………はぁ
あの勇姿を…………誇り高き……プロイセンの……戦士の姿を…………世界に…………しらしめなければならない…………今がその時だ…………
はぁ……ふぅ…………はぁ…………はぁ…………悪魔の黒軍と呼ばれし………プロイセンの……姿を…………今一度……蘇えらせる時がきたのだ……
テュール…………これを…………
これは?
私の遺書だ…………これをどう使うかはお前にまかせる…………はぁ……はぁ……もう一度…………立ちあがれ…………
お前の中には…………すべてが…………誇りが……悲しみが……怒りが…………そのすべてが……お前の血には……王家の血には根付いている
このプロイセンの未来は……お前にまかせる…………ジーク…………ハイル………………
…ジークハイル
戦車隊進めっ!!! 侵攻を食いとめ、我々プロイセンの恐怖をソルビエスの兵たちに未来永劫刻みつけるのだっ!!!
…………これが、王の血というものか
この光が……プロイセン王家を……民を……すべてを照らす光となることを…………