よしっ! ネフド、今日の夕飯はウサギにきまりだ。お前、好きだろう?
ん……
ふぅ……相変わらずか。昔はなぁ……
ほらよ……
んっ? 風向きがかわったな。季節の変わり目か……
この書類は、どういうことですか?
説明しましょう。我々アルメリカはあなたがたの助力を必要としています。ルブアルハーリー王国にぜひ、協力をお願いしたいのです
我々アルメリカの軍一個師団を、あなたがたルブアルハーリーに駐留させてほしいのです
一個師団をですか……
はい。ご存じのように、世界はふたつの勢力による激しい戦いが続いています
しかし我々アルメリカと敵対関係にあるプロイセン、皇国は短期間で力をつけ、非常に大きな脅威となっています
しかし、その勢いを維持するためには、資源がとても大切です。かの二国は、世界有数の産油国に狙いを定めることでしょう
また地理的にみても、このルブアルハーリーは二国に楔を打ちこむには、要衝となります
ルブアルハーリーのため……そうして我々アルメリカの勝利のためにも、ぜひ受けいれていただきたい
…………それは簡単なことではありませんね
それは前回も、その前も聞きました。でも、もう猶予はありません。皇国、プロイセンの脅威は日に日に強くなるばかりです
明日にでも祖国を失うかもしれないと震えて過ごす人たちが、今の世界にはあふれています。我々アルメリカは、その人たちを救いたいのです
もちろん、その中にはルブアルハーリーも含まれていますよ
……………………
(我々を守ると言ってはいるが、どこまで本気なのだろうか……我々への安全保障を理由に石油資源の無償提供を要求してくる可能性もある)
(その駐留をきっかけに、戦後の駐屯……あるいはルブアルハーリーを傘下におさめようとする可能性も棄てきれない……認めることは……)
外交官……前にも一度お断り――
…………本当に断っていいのですか?
と、いいますと?
ルブアルハーリーは、近年目覚ましい発展をとげてきたのは事実です。しかし、その中心となるのは石油ではありませんか?
はい…………
しかし原油があっても、意味がないのではありませんか?
…………!?
あなたがたは、石油精製技術を人質にとろうというのかっ!
さて……私はそのようなこと、言った憶えはありませんよ
(くっ……卑劣な…………)
(こんな時に、フェダーインがいてくれれば……)
いかがですか?
すまない。ガワル様、遅れちまったみたいだな
ダフナ、ネフド!
ガワルの旦那、待たせたな
ん…………
よくぞ、来てくれたな。修行のほうはもういいのか?
ああ……風が移り、季節が移り変わった。まあ……ネフドは相変わらずだけどな……
ふーん……なるほどな。アルメリカさんよ
なんでしょうか?
ルブアルハーリーは、これを受け入れることはできねぇな
しかし……プロイセンや皇国に対抗できるのは、わがアルメリカにおいて他にはない。ルブアルハーリーを守るためには――
たしかにアルメリカは列強各国の中でも、飛び抜けた軍事力をもっているだろうな……しかし、それは海と普通の陸地のみ……
砂漠においての最強は、このフェダーインが司るルブアルハーリー軍だ……そうだろう?
くっ……
我々、フェダーインはなにがあろうとルブアルハーリーを守り抜く! 代々、それを責務としてきた一族に誓う
我が国のことは心配無用と報告してくれ
後悔しないのか……
そうですね……アルメリカとはいい関係を続けたい……そう思っています
しかし、それができないとなれば、我々は今後の発展のため、大きな決断をする必要があるでしょう
石油精製の技術をもちながら、石油不足に悩む国と手を結ぶことも考えていかねばならなくなる……
まさか……もう交渉を……
さて……どうでしょうか?
くっ……き、今日のところは出直させていただくことにする、失礼するっ
ふぅ……ダフナ、助かった
すまなかったな。まさかアルメリカがあんな馬鹿な提案をしてくるとは思わなくてな。しばらくは首都にとどまるつもりだ
よろしく頼む。守護者、ルブアルハーリーの隼よ