張繍陣営

張 繍
張 繍

賈駆ー! 賈駆賈駆賈駆ー! どこだーい!どこにいるんだーい!大変だ! 大変なんだよー!

張 繍
張 繍

ああっ、いないのか! ここにもいないのか! こんな大変な時にいったい賈駆はどこへ行ってしまったというんだろう。賈駆ー! 賈駆賈駆賈駆ー!

張 繍
張 繍

困った、ああ困った! こんな時に賈駆がいないなんて……賈駆ー!お願いだから返事をしておくれー! せめて、いるなら『いる』と、いないなら『いない』と言っておくれー!

賈 駆
賈 駆

いませーん

張 繍
張 繍

ああっ、そんなところに! なぁんだ、いるじゃないかぁ!まったく、いつもお茶目さんで……賈駆はかわいいなぁ!!!

賈 駆
賈 駆

あーいー。おそれいりますー……

乱世の世とは思えない、なんとも気の抜けたやりとりである。
だが、さきほどから城内を慌ただしく駆け回っていたこの男、名は張繍といい、
何を隠そう、この城の主にして雍州の群雄として知られている人物なのである。
一方、全身からだるい雰囲気を放出し、まったくやる気が感じられない黒尽くめの少女。
彼女こそ、雍州にその人ありと知られた鬼謀の軍師、賈駆文和その人なのである。
……が、彼らの会話からは、威厳や風格といったものは一切感じられない。
しかし、この城内においてはもはやこれが日常ゆえ、今さら誰も気にするものはない。
とはいえ、今回ばかりは、いつもと若干様子が異なるようである。
張 繍
張 繍

聞いておくれよ賈駆! いま、我が国は大変な状況にあるんだ。危機一髪なんだ! 崖っぷちなんだよ!

賈 駆
賈 駆

はー、そーなのですかー

張 繍
張 繍

そうそう、そうなんだよ! 隣の涼州に董卓ってこわーい男がいたろう? あの男、都を制圧したあと、なんだかよくわからないけど急に死んじゃったっていうじゃないか!

賈 駆
賈 駆

それは……たいへんですねぇー

張 繍
張 繍

違うよ! 大変なのはここからなんだよ! 董卓がいなくなって、ああ、これで一安心とホッとしていたら……なんとなんと!その妹があとを継いだっていうじゃないかーーー!

賈 駆
賈 駆

はぁ……それはよかったですねぇ……

張 繍
張 繍

全然よくないんだよ! ていうか、もっと大変なのはここからなんだよ! その妹、董白っていうんだけど、恐ろしいことに、涼州軍閥の馬騰と韓遂と手を組んだっていうんだよ!

賈 駆
賈 駆

……おなかが空いたんで、おやつを食べてもいいですかー……?

張 繍
張 繍

いいよ! 好きなだけお食べ! でね、この同盟の目的が……なんとなんとなんと! この私、張繍を倒して雍州に打って出るためだっていうんだよ! ああっ、もうだめだーーー!!

賈 駆
賈 駆

もぐもぐ……。あー、このお菓子おいしいですねぇ。張繍殿もいかがですかー……?

張 繍
張 繍

せっかくだからいただくよ。もぐもぐ……あ、おいしいねこれ。でね! そんな感じで涼州の人たちに目をつけられちゃった上に、雍州の周りがどこもかしこも大騒ぎなんだよーー!!

賈 駆
賈 駆

もぐもぐ……。おいしいので、もういっこ食べますねー……

張 繍
張 繍

涼州の向こうでは羌族っていうよくわかんない異民族が暴れているっていうし、南の益州には黄巾賊討伐で名を上げた劉備っていう強そうな人が州内の覇権を争っているっていうし……

賈 駆
賈 駆

あー……もういっこ食べたいですけど、太るといやですからやめておきますねー……

張 繍
張 繍

賈駆はやせてるから平気だよ。で、しかもね!我が雍州にも……えーと、なんだっけ、シカクとカクリとかいう連中が……

賈 駆
賈 駆

李確と郭汜ですー……

張 繍
張 繍

そうそう、それ! その人たち、都で大暴れしてたんだけど政権争いに負けて、この雍州になだれ込んで来たっていうじゃないか!賈駆どうしよう! 怖くてたまらないよ!

賈 駆
賈 駆

私は……熱いお茶が一杯怖いですー……

張 繍
張 繍

そっかぁ、甘いお菓子を食べたあとだもんね。というわけで賈駆!何か策はないかな! とりあえず、すでに領内にいる李確と郭汜だけでも何とかしないと!

賈 駆
賈 駆

李確と郭汜についてですねー……。はいはい、すでに情報は調べてありますよー……

張 繍
張 繍

もう調べてあるのかい! 賈駆は賢いなぁ!!

賈 駆
賈 駆

はいー……なんでも、鶏のトサカのような髪型で、肩が張ってる革鎧を身にまとい、汚物は消毒だ~~!! と叫びながら、口から火を噴いて回っている連中だそうで…………

張 繍
張 繍

なにそれこわい! すっごくこわいよ!そんなのが雍州にいるの!ううっ、どうしよう~~~!

賈 駆
賈 駆

うそですー。本当は……この乱世においてはごくごく一般的な、普通に残虐非道で平凡に悪辣な暴れん坊たちですー……

張 繍
張 繍

なーんだ、びっくりした。ごくごく一般的で普通で平凡な人たちなら安心……って、残虐非道で悪辣な暴れん坊!? そんな人たちが雍州にいるの! 大変な危機じゃないか!

賈 駆
賈 駆

まぁ……そうといえば、そうですねぇ……

張 繍
張 繍

頼むよ賈駆、何か策はないかな? できれば穏便に雍州から出て行って欲しいんだけど……やっぱり、戦わないとダメなのかなぁ?

賈 駆
賈 駆

そうですねぇ……。戦になると、私もいろいろ面倒くさいので……ここはひとつ、とっておきの策をつかうといたしましょう……

張 繍
張 繍

えっ、策があるのかい! やっぱり賈駆は頼りになるなぁ!!

賈 駆
賈 駆

それほどでも……ありますねー……あ、ちなみに……使うのは、美女連環の計という策ですー……

張 繍
張 繍

すごい! なんかすっごくそれっぽい、本格的でかっこいい名前じゃないか! いったいどんな策なんだい!?

賈 駆
賈 駆

あいー……。まずは、エロい美女を用意してください……

張 繍
張 繍

えろ……い? それは、いやらしい美人さんを用意しろってことなのかい?

賈 駆
賈 駆

そうですー……。ボンッ! キュッ! ボンッ!で、ババーーン!!ドタプーン! そんな感じの美女ですー……

張 繍
張 繍

ふむふむ、それでそれで?

賈 駆
賈 駆

あいー……。美女が用意できましたら、彼女に色仕掛けをしてもらいます……しゃなりしゃなりと、お嬢様な感じで……あい……

張 繍
張 繍

なるほど、それでそれで?

賈 駆
賈 駆

色仕掛けが成功したら……もうこっちのもの……敵がえろえろぎしあんしている時に寝所を兵で包囲し……パッと散って、ガッと殺って、キュッと斬って、は~~ん。これで勝てます……

張 繍
張 繍

すごい! すごいじゃないか賈駆! なるほど、乱暴者は得てして美人に弱いというからね、これならきっとうまくいくよ!やっぱり賈駆は賢い

賈 駆
賈 駆

あーいー……。おそれいりますー……

張 繍
張 繍

じゃあ、さっそく美女を用意しなくてはいけないね! 賈駆、その役目を頼む美人さんはどこにいるんだい?

賈 駆
賈 駆

………………はぁ?

張 繍
張 繍

いや、賈駆のいう、いやらしい美人さんだよ。けっこう大変そうな計略だから、そのへんから適当に連れてきてやってもらうわけにはいかないだろう?

賈 駆
賈 駆

あ……あのー……未亡人になられた、張繍殿の叔父上の奥様は、どこに……

張 繍
張 繍

……え? そ、そんな人いないけど……?

賈 駆
賈 駆

あー……なんということでしょう。この世界線には、鄒氏さんもいなかったのですかー……となると……

張 繍
張 繍

となると?

賈 駆
賈 駆

おきのどくですが ちょうしゅうさまのおいのちは きえてしまいました……

張 繍
張 繍

え、えええっ! そんなのってないよー! な、何か手はないのかい!

賈 駆
賈 駆

ないですーー。どうもおつかれさまでしたーー。撤収はいりまーす

張 繍
張 繍

そ、そんな! 頼むよ賈駆! 帰らないで、ねぇ!

賈 駆
賈 駆

短い間でしたが……ご愛読ありがとうございましたー……。張繍殿の来世の活躍にご期待くださいー……

張 繍
張 繍

え、ちょ、ね、ねぇ! 来世って!現世の私はもうダメなのかい?ああー! どうすればいいんだーー!!

賈 駆
賈 駆

お菓子を食べてお腹がふくれたので、ちょっとお昼寝をしてきますー……晩ご飯の時間になったら、起こしてくださいー……

張 繍
張 繍

ま、待ってー! って、そうだ!美人といえば賈駆だって美人じゃないか! いっそ賈駆が自分でこの策を実行すれば……

賈 駆
賈 駆

あー……張繍殿は……お命よりまず、目の心配をなされた方がいいです……

張 繍
張 繍

そんなことないよ! 賈駆はかわいいって! 世界一かわいいよ!

賈 駆
賈 駆

張繍殿の頭の中の方がずっとかわいそう……じゃなくてかわいいですよー……まるで、色とりどりの花が咲き乱れる、お花畑みたいなー……

張 繍
張 繍

そ、そうかい! 私はかわいいのかい? い、いやぁ、賈駆にそう言われると照れるなぁ……

賈 駆
賈 駆

……めんどくさいので、私はもう帰りますねー……

雍州の群雄、張繍。そして、その右腕の軍師、賈駆。
血で血を洗う凄惨な乱世に生きているはずなのだが……
とりあえず今日も二人は、なんとなーく平和であった。